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消費者金融、クレジットカードのローン、住宅ローンなどの借金の滞納が続くと、債権者は公的な強制力の行使、つまり債務者の財産への強制執行を検討します。ここでは、自己破産の前に知っておきたい強制執行について、詳しく解説しています。
借金の返済を怠ると、債権者から支払い督促が届きます。その支払い督促を無視し続けると、債権者は裁判所に強制執行の申し立てを行います。
強制執行は、国家権力のもと債務者の財産を差し押さえ、債権者に分配する合法な手続きです。そのため、強制執行が認められると、債務者は裁判所の命令に従うことが求められます。強制執行は、債務者にとって厳しい手続きです。債権者と相談し、借金の返済計画の見直しや債務整理を実施するなど、強制執行を回避できるように努めましょう。
強制執行の種類は、不動産執行、動産執行、債権執行に分類できます。
不動産執行は、債務者の土地や建物への強制執行のことです。不動産執行は、不動産を売却する強制競売と不動産を管理して賃料から収益を得る強制管理があります。不動産からお金を回収することは容易ですが、時間がかかる傾向にあります。
動産執行は、債務者の商品、機械、家財、現金など、価値のある動産を差し押さえます。動産執行は、容易に換金できる特徴がありますが、よほどの価値があるものを換金できない限り、多額の返済は難しい傾向にあります。
債権執行は、債務者が第三者に対して有する債権を差押え、換価します。債権は、預金、給料、売掛金、貸金などが該当します。債権執行は、時間もかからず、換価性も高い傾向にあります。
借金の滞納が続くと支払い督促が届き、支払い督促を放置しておくと利益喪失通知が届きます。それも放置しておくと、強制執行に進んでしまいます。ここでは、債務不履行からから強制執行までの流れを解説します。
借金の支払いの滞納をしていると、支払い督促の電話や郵便がきます。この時点で支払いを行えば、債権者も問題ないと判断することがほとんどです。この後も借金の支払いを怠っていると、債権者は内容証明郵便で記録が残る督促を実施します。
内容証明郵便で来る支払い督促まで放置しておくと、期限の利益喪失通知書が届きます。この期限の利益喪失通知は、借金の残額の一括払いを要求されます。すなわち、借金の分割払いができなくなります。
債権者が強制執行を行うためには、裁判所へ申し立てる必要があります。裁判所は、債権者に公文書である債務名義を与えます。この債務名義は、債権の存在を証明し、強制執行の許可を意味します。そして、債務名義を得て強制執行を申し立てます。この後、簡易裁判所の支払い督促や訴訟手続きで、強制執行されます。
借金を3カ月程度滞納してしまうと、ほとんどの債権者は差し押さえの検討に入ります。この時期でも返済の目途が立っていない場合は、債権者と交渉したり債務整理を検討していく必要があります。
強制執行では、差し押さえられるものとそうでないものがあります。具体的に強制執行の対象物を解説していきます。
給料は、強制執行の対象物です。債権者は債務者から一定額を強制的に徴収することができます。毎月の給料のほか、ボーナスや退職金も強制執行の差押えの対象です。
債務者の預金や現金ももちろん差押えの対象です。債権者が預金を差し押さえられると、債権者は債務者の代わりに払い戻しを受ける権利を有することになります。口座が差し押さえられると、通帳に「サシオサエ」と記載されます。
不動産や動産は差し押さえられると、競売などの手段で換金され、債務の支払いに充当されます。不動産を差し押さえられても、競売までは不動産を自由に使用することができます。動産の多くの一般的な家財は、ほとんど差し押さえられません。差し押さえの対象は、骨董品や貴金属など、高額で換金できるものです。
自動車も強制執行の対象になります。自動車登録ファイルに登録された自動車は、自動車執行の対象です。軽自動車、バイク、登録のない自動車などは、強制執行の対象となります。
債務者の所有物が全て強制執行の対象になるわけではありません。差押え対象外のものは、66万円までの現金、生活必需品、食品や燃料、家具、家電、調理器具、仕事の道具、仏具、生活保護や年金受給権などです。ただし、差し押さえを回避するために高価な家電を購入するなどしても、意図的な差押え回避行為とみなされ、結局差し押さえられるので注意しましょう。
強制執行による差し押さえは、債務者にとって経済的な影響だけでなく、精神的にも大きなストレスを与えます。この差し押さえは、借入残高の一括返済や債務整理で解除できます。
差し押さえは、支払い督促や訴状に適切に対応することでも回避できる可能性もあります。支払い督促の内容に異議がある場合は、異議申立書を裁判所に提出すれば、民事訴訟に移行します。訴状が届いても答弁書を提出し、裁判に出席し、債務者の主張をすることで、即時の差し押さえは回避できるでしょう。
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